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大阪高等裁判所 昭和35年(く)23号 決定 1960年6月23日

少年 Y(昭一七・一二・一八生)

主文

本件抗告を棄却する

理由

本件抗告の罪由は、今度の事件は昭和三四年一〇月一六日本少年が神戸再度山学院を仮退院した後の四回の窃盗だけで、その盗品は被害者に返つている、少年はその後深く反省して、二度と過ちを繰り返さないことを決心している。今回の保護処分決定理由として少年は心臓が弱く家に帰つては十分な手当が受けられないから医療少年院に行つて、国の費用で徹底的に病気を治すように、と裁判官に言われたけれども、少年の母親は同人が責任を持つて少年を病院に入れて治療させるといつて、その準備をしているようであり、本少年としても、少年院を出てからの始めての事件でもあるので、帰宅の上病院に入つて治療を受けたい、というのである。

しかし本件記録並びに少年調査記録を精査すると、本少年は早くより非行性を現わし昭和三一年五月一三歳の時わいせつ非行により修徳学院に収容されたが、その後同院を逃走し、昭和三二年九月窃盗罪により保護観察に付せられ、同三三年八月同罪により初等少年院送致の保護処分を受け、同三四年一〇月一五日神戸再度山学院を仮退院したものであるが、性格矯正の実上らず、不良性ある者と交友し、昭和三五年一月一日から同月二九日までの間に○岡ことR(昭和一六年七月二〇日生)N(昭和一六年一二月一四日生)と共謀又は単独で大阪市西港両区内で六回にわたり衣類九点、靴五足、小型乗用自動車一台窃取の犯行を重ねたもので、少年の智能にも情緒にも問題点があり、保護者である養父母には本少年に対する監護矯正の能力なく、加うるに少年は結核にかかつているのであつて、収容保護による環境調整、性格矯正、疾病治療の必要があると認められるから、原裁判所の本少年に対する医療少年院送致処分は何等不当なものではなく、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項少年審判規則第五〇条により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 奥戸新三 判事 塩田字三郎 判事 青木英五郎)

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